歯の怪我(ヒビ・欠けた・割れた・折れたとき、まずどうする?
歯の怪我は、転倒、人との衝突、交通事故などの外的要因や、歯ぎしり・食いしばりといった日常的な習慣によって引き起こされることがあります。これらの怪我の治療が遅れると、最悪の場合には歯を失う原因となることもあります。大切な歯を守るため、以下のような症状が見られた場合は、速やかに当院までご相談ください。お子様からご高齢の方まで、年齢に関係なく、大切な歯を残すために最善の努力をいたします。
- 歯にヒビが入った
- 歯が欠けた
- 歯が割れた
- 歯が折れた
歯の怪我の種類と症状
歯の怪我(損傷)は、以下のように分類されます。治療の難易度や方針を決める際に重要です。
歯の損傷
ヒビが入る
一見すると大きな変化はないものの、よく見るとヒビが入っているということがあります。
わずかな隙間から唾液が侵入し、根管で神経が感染すると痛みが生じます。
歯冠が欠ける・割れる・折れる
歯冠部(歯の見えている部分)が欠ける、割れる、折れるといった状態です。
割れた・折れた場合は、損傷したところから唾液が侵入し、根管の感染・痛みが生じる可能性が高くなります。
根管が割れる・折れる
外側から変化はないものの、歯の根が折れているという状態です。
直後にはほとんど症状がありませんが、歯が揺れるというケースが見られます。放置していると痛み、歯茎の腫れが強くなってきます。
歯の周りにまで及ぶ損傷
歯の脱臼
いわゆる、歯がぐらついている状態です。
触った時、噛んだ時に痛みが出ます。
歯の陥入
歯が、本来より深くめり込んだ状態です。
乳歯が陥入した場合には、永久歯へと悪影響を及ぼすことがあります。
歯の脱落
歯が抜け落ちることを指します。
牛乳または歯の保存液に浸けて、ただちに歯科医院を受診する必要があります。
顎骨の骨折
歯を支える顎の骨が折れている状態です。
強い痛み・腫れを伴います。早急な治療が必要です。
歯の神経にまで及ぶ損傷
歯が欠けた・割れた・折れたといった場合、その隙間から唾液が侵入し、神経で感染が起こることがあります。神経が死んだ場合には、根管治療が必要になります。
歯の怪我でよくあるケースと対処法
歯が欠けた・割れた・折れた
歯の一部が欠けた場合であって、神経の感染が起こり、痛みが出ることがあります。割れた・折れた場合は、早急な受診が必要です。欠けがごくわずかであれば無症状のこともありますが、その場合も欠片を持って、歯科医院を受診してください。
歯の根の破折・歯がグラグラする
歯の根が割れる・折れるなどして、歯がグラグラすることがあります。歯茎からの出血が見られることもあります。外からは見えないため、レントゲン検査・CT検査などにより歯の根の状態を確認した上で、治療を行います。
歯がめり込んだ(陥入)、位置がズレた(転位)
乳歯、生え始めの永久歯がめり込んだ場合には、その後元の位置に戻る(生えてくる)ことが期待できます。ただ、乳歯の陥入は永久歯に悪影響を及ぼすこともあります。位置がズレている場合には、その位置を戻し固定します。
歯が抜けた(脱落)
歯が抜けた場合、条件が良ければその歯を元に戻す「再植」を試みます。抜けた歯を牛乳または専用の保存液に浸け、一刻も早くご相談ください。抜けた歯が見つからない場合も治療が必要ですので、必ず受診してください。
歯の変色、歯茎の腫れ
外傷の直後、血管が損傷して歯が赤みを帯びることがあります。また神経が死んだ場合には、歯の黒ずみが生じることもあります。歯の根が折れている場合などには、歯茎の腫れも見られます。
歯を怪我してしまった時の応急処置
歯が欠けた・割れた・折れた場合
歯の損傷が大きいほど、神経が感染している可能性が高くなります。すぐに歯科医院を受診しましょう。
欠片があれば、牛乳または歯の保存液に浸けてお持ちください。
歯茎から出血している・歯がグラグラしている場合
出血がある場合は、うがいをして、清潔なガーゼで止血を図ります。その後、歯科医院を受診してください。
歯がグラグラしている場合は、歯を触ったり引っ張ったりせず、すぐに歯科医院を受診してください。
歯が抜けた場合
抜けた歯を牛乳または歯の保存液に浸けて、すぐに歯科医院を受診します。条件が良ければ、再植が可能です。歯の保存液は、薬局などで購入できます。
頭を打ち、吐き気・めまいがする場合
歯の怪我があっても、脳神経外科などの受診を優先します。意識がない場合は、救急車を呼んでください。
怪我した歯の治療法
歯が欠けた・折れた場合の治療
神経の感染がない場合は、欠片を接着するか、レジンで修復を行います。
感染がある場合には、根管治療を先に行い、その後被せ物などで修復します。
歯がグラグラしている場合の治療
揺れがごく軽度であれば、経過観察を行いながら、揺れが治まるのを待ちます。
揺れが大きい場合には、両隣の歯を支えにして固定します。
歯の根が折れている場合には、固定期間は数ヶ月必要になります。
歯の位置がズレた場合の治療
元の位置へと整復し、周囲の組織が回復するまで固定します。
乳歯の位置がズレて永久歯に影響を及ぼしそうな場合は、定期的にレントゲン検査を行い、必要に応じた治療を行います。
歯が抜けた場合の治療
歯の保存状態が良ければ、再植を試みます。
牛乳または歯の保存液に浸けて、一刻も早く歯科医院を受診しましょう。
歯が変色した場合の治療
神経が死に黒っぽくなった歯は、ホワイトニングで白くすることができません。
セラミック治療により改善できますが、歯を削ることになるため、慎重に判断しましょう。その他、ウォーキングブリーチという方法がとられることもあります。
治療のポイント
- 欠けた・割れた歯の欠片、抜けた歯は、牛乳または歯の保存液に浸けてお持ちください。
- 歯の欠片は、できれば流水で軽く洗ってください。
- 抜けた歯を拾う時は、歯根膜のある歯の根を触らないようにしてください。歯根膜が傷つくと、再植が難しくなります。
- 歯の根が折れている場合など、直後には外見上の症状がないこともあります。歯を強く打った場合は、症状の有無にかかわらず、念のために受診されることをおすすめします。